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2025.06.05
我々が生活する中で、日頃よく目にする「額縁」。
飲食店や雑貨屋、ショッピングモール等にも、絵が飾られてる場合はその殆どに額縁が付いています。
2024年12月に発表された文化庁の調査によると、日本のアート業界の市場規模は年間946億円で、
今も沢山の人々がアートを取引していることが分かります。
そのアートと切っても離せない「額縁」。
今回は、そんな額縁について額縁専門店である目線から
意外と知られていない額縁の世界や、初めて絵を買ったという方へ選び方の基準等を説明していけたらと思います。
そもそも「額縁」といっても、2種類の意味があります。
我々が扱う、美術業界における額縁と、建築業界にも別の意味を持った額縁が存在します。
建築業界における額縁は、窓枠や扉の枠をことを指します。
業界によって別のものを指す「額縁」ですが、どちらも「枠取りをする」といった意味合いには変わりありません。
額縁の歴史は古く、先ほど申し上げた絵を「枠取りする」という意味合いですと、古代ローマに建てられたとされる建築物の壁画に枠取りされた装飾が確認されてます。
現代のものと近い、移動できる額縁ができたのはルネサンス期(14~16世紀頃)だとされております。
元の絵を装飾するという概念はもちろん、現代では科学の発展とともに絵画や作品を保存する「保存額装」といった概念、役割も果たしています。
額縁の役割は大きく分けて2つ
・作品の保護、保存(保存性)
・絵の装飾とインテリア(デザイン性)
の2つがあります、下記で詳しく解説していきます。
世の中には様々な技法や材料を使った作品が存在しますが、それらの作品の美しさを長く保たたせるには
・物理的なダメージ
・光学的なダメージ(紫外線、可視光)
・化学的なダメージ(酸化、酸性ガス、それぞれの作品の材料に良くない化学物質)
・湿気
・外からの物理的な衝撃
等から作品を守る必要があります。
これらのダメージは適切な素材の額縁や、そうでない額縁でも追加加工を施すなど、様々な対策方法を取ることができます。(※全ての劣化を防げるわけではない)
作品の保存に関してはコチラの記事で詳しく紹介させていただいてます→
近年、キャンバス張り込み作品を中心に、絵を額装しない方法も見受けられますが、
額装することでより新しい存在感を演出したり、特定の印象付けをしているケースもまだまだあります。
また、この世に様々な種類の作品があるのと同様に、額縁も沢山の種類があります。
(当店だけでも5000種類以上の額縁があります)
もし複数販売されている版画等でも、額縁と合わせることでこの世に一つだけのインテリアとして昇華させることもできます。
額縁を探す前に、入れる作品が何なのかをしっかり把握する必要があります。
何故なら、作品の種類や形によって、使えるものと使えないものが存在します。
最もポピュラーな作品の類で、みなさんが一番目にすることが多いのが平面作品です。
平面作品においては、基本的に全ての額縁を選ぶことが可能です。
一部、あまりにも大きいサイズ(1辺が3mを超えてくるもの)に関しては、製作が難しい種類のものもございますので、大きな作品を依頼する際はお気をつけください。
キャンパスを張り込んだ作品や、パネル画、タイル等を指しており、
溜まりによって少し高さのある油絵やアクリル画もここに分類されます。
これらに関しては
・深さのある額縁を選ぶ
・通常の額縁に「ドロ足」と呼ばれるオプションを付ける
・フロートフレーム(仮額とも呼ばれており、展示会や公募展の際によく使われる)
上記の3点が選択肢として考えられます。
立体作品と言っても幅は広く、当店で扱ったものでも模型やユニフォーム、日本刀等
挙げ出すとキリがありません。
上記の「厚みがある作品」との違いは、厚みの違いになってきます。
つまり、平面の作品に厚みがあるものですと既存の額縁で収まることが多いですが、模型等のより厚みのある(厚みより高さという表現の方が近い)ものの場合は、より複雑に追加オプションを組み合わせて額装する可能性が出てきます。
立体作品を額装する方法は、大きく分けて2種類あります
・額縁の内部に奥行きが追加され、箱状の空間に立体物を額装することができる「ボックス額装」
・額縁のイメージとはかけ離れますが、アクリルを駆使し透明な箱状物の中に作品を入れる「アクリルボックス」という立体物がとても映える額装方法
上記の2種類があります。
表具とは、日本の伝統的な装飾方法で日本画や中国画、屏風などの和系の作品において用いられる装飾技術で、日本画や中国画を「掛け軸・屏風・巻物・衝立」へと仕上げます。
上記では額縁の中に入れる作品を軸にしましたが、次は外側の額縁本体を軸に紹介していきます。
額縁の種類は大きく分けて3つ(アルミ・木・樹脂)の素材ごとに分けることができ、それぞれ素材による特徴があります。
・傷がつきにくい
・経年変化が無いため、使い回ししやすい
・細いフレームを作ることが可能
・一番歴史が長く様々な種類がある
・加工しやすい
・一番強度の強いものを作ることが可能
・安い
・軽い
・強度が出ない為、大型の作品には不向き
以上の3つの種類があります。
額縁の素材に関しては、コチラの記事で詳しく紹介しております。
額縁を購入するのが初めての方でも分かるよう、大きく分けて3つの視点から説明します。
大きな絵や、大きいサイズの額縁を製作する場合、
強度の観点から細い額縁を使うことは難しくなります。
また、大きくなる程、強度がある額縁を選ぶ必要があることから、選べる種類も少なくなっていきます。
(木製の額縁の場合、ある程度の太さであれば幅2.5mくらいまでは問題なく作成可能で、それ以上も特殊な加工を施せば可能)
また、様々なオプション(マット等)に関しても、最大サイズの制限がある為注意が必要です。
モダンかクラシック、和か洋、明るいか落ち着いているかなど、額縁にも様々な方向のデザインが豊富にあります。
作品に上記のどちらの要素があるのか、どういったイメージで飾りたいかなどを事前に把握しておくと、額縁をスムーズに選ぶことができるかと思います。
また、作品と額縁だけでなくインテリアや飾る場所の周りの雰囲気も合わせて考える必要があります。(飾る予定の場所の写真があると良いです)
時には、中の作品より額縁の方が高くなる場合もあります。
しかし、額縁も様々な価格帯のものがございますので、あらかじめ予算を決めておくと素早く提案することが可能になります。
額縁の本体に当たる部分。
様々なデザインのモノがあります。(当店の取り揃え5000種類以上)
額縁にアクリル等の[3.グレージング]が引っかかる部分。
このカカリと[6.裏板]で挟むことで、額縁内に色々なものを収めることができます。
アクリルやガラスのことを指します。
光(紫外線)から作品を守ったり、ものによっては反射を防ぐ効果もある。
額縁によくある周りの余白の部分。
作品を[3.グレージング]と直接触れさせないための重要な役割を担っている。
[3.グレージング]と[4.マット]と[6.裏板]を合わせても額縁の深さが深い場合に発生する空間を指します。
中性紙と呼ばれる板状の素材で、厚みを調整することで空間を埋めます。
額縁の一番裏側にある板の部分。
ベニヤ板やMDFなどがよく使われる。
昨今は、ベニヤ板やMDFから発生する<酸性ガス>による作品劣化を防ぐために、プラスチック性の板も使われる。
(他店では基本的にベニヤ板やMDFを使っているところが見受けられますが、当店では基本的にプラスチック製の板か、強度が必要な場合はアルミ複合版を推奨しています)
[6.裏板]を額縁にしっかり押さえて、裏板が外れないようにするための金具を指します。
額縁を壁に飾るためのヒモと、ヒモを取り付ける金具を指します。
吊金具とヒモ以外にも壁に飾る方法はいくつかありますが、別記事にて紹介しております。
ファブリでは絵画や写真の額装だけでなく、お客様のご要望にお応えするべくさまざまな商品・サービスをご用意しております。
こちらに記載のない商品や作業にも対応致しますので、お気軽にご相談ください。
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